「家賃値上げ」を深読み!問題は日本の住まいモデルの転換だった

今回読み解く記事
小原ブラス、自宅マンションで突然の値上げ通知→結果、据え置き更新となった経緯明かす「ケンカしたいわけじゃない」(デイリー)より
今は借主、貸主の両者にとって厳しい時代
このところ、賃貸住宅の「家賃値上げ」という言葉を耳にする機会が増えた。
分譲価格の高騰で持ち家を断念し、賃貸に流れる人が増えているとも聞くが、
外国人オーナーになり、いきなり家賃が倍増したという話も少なくない。
だが、家賃の値上げは「仕方ない」部分もある。
建物を維持するには、電気代、人件費、修繕費……。
どれも値段が高騰しており、以前と同じ感覚で物件を維持できる時代ではなくなったからだ。
給料が上がらず値上げが続く中、借主にとっては生活費の負担が重い。
だが、貸主にとっても、簡単に家賃を据え置ける状況ではない。
こうした状況もあり、日本の住まいは転換点に差しかかっている。
家賃の値上げは「強欲な大家」の話ではない
家賃値上げの話題になると、どうしても「貸主 対 借主」という対立構図で語られがちだ。
ニュースのネタ元となっている「あさイチ」(NHK)でもそうだった。
だが、実際はそんな単純なものではない。
家賃の値上げは収益を上げたくてしているのではなく、いたし方なくしている部分もある。
基本的に賃貸の場合、共益部分の電気代は大家負担になる。
その電気代自体が上がり、工事費も、人件費も、修繕材料費も上がっている。
退去があれば改修費をかけなくてはならない。
その上で家賃を据え置いたまま次の入居者を募集するのは、正直かなり厳しい。
月3000円の値上げは、高いのか安いのか?
番組で紹介されていた事例では、月3000円の家賃値上げが話題になっていた。
私はそれを見て「ずいぶん良心的な大家さんだな」と思った。
年間にすれば3万6000円。
電気代や管理費の上昇を考えれば、むしろかなり控えめな値上げだ。
もし自分が借主の立場なら、昨今の情勢を考えて、交渉せずに条件を飲む。
そこに時間と神経を使うくらいなら、別のことに時間を使いたいというのもある。
「交渉に勝った話」が増えすぎると、何が起きるのか?
番組を見ていて、1つだけどうしても引っかかった点がある。
それは、家賃値上げを拒否できたことを、どこか「交渉に勝った」「やってやった」という成功体験のように見えたことだ。
(あくまで個人の感想です)
もちろん、制作側はそんなつもりはなかったと思うのだが、正直、あまりいい印象を受けなかった。
家賃交渉は、勝ち負けの話ではない。
そこには、建物を維持し、住環境を支えている側の事情もある。
もし、値上げを拒否することが「正解」になり、交渉に勝つことが「当たり前」になったら、
賃貸市場はかなり厳しい状況に追い込まれる。
交渉文化が広がるほど、実のところ住環境の質は少しずつ下がっていく。
賃貸は取引ではなく、大家か管理会社との関係が大事。
長く住む場所だからこそ、その関係をどう保つかは、金額以上に大きな意味を持っている。
借主は法律で守られている。それでも更新時に差が出る理由
法律上、賃借契約では、貸主が一方的に家賃を引き上げられず、
値上げに応じないことを理由に退去させることはできない。
そう、借主は制度上で強く守られているのだ。
だが、実務の現場では、必ずしも「何も起きないわけではない」。
更新時の条件提示の中で、更新料の増額や契約期間の短縮、定期借家への切り替え提案など、
家賃以外の条件によって調整が行われることは珍しくないと聞く。
表向きは制度に従いながら、現場では密かに調整が重ねられていく。
つまり、同じ物件の中で借主の対応によって、差が生まれているのだ。
住居費は、これから「人生で最も逃げられない固定費」になる
分譲は高すぎて買えない。
賃貸も値上げが始まった。
持ち家でも、維持費と税負担は増えていく。
住まいは、もはや「安心」ではなく、人生の中で最も逃げられない固定費になりつつある。
家賃値上げ問題は単なる節約の話ではない。
それは、日本の住まいが転換期に入った中で、
持ち家か、賃貸か、どんな住居スタイルを選ぶかという問題でもある
それ自体が、これからの人生の選択肢を左右する。
そう、今、私たちは日本の住まいの転換期のまっただ中にいるのだ。
深読みポイント
- 住居費は、これから「人生で最も逃げられない固定費」になる
- 家賃値上げ問題は「日本の住まいの転換期」と考えよう


