【連載4】中しまりんの琴線深読みLab ~脳・身体・細胞を調律する、箏と音の科学~

「箏のことは知らないのに、なぜか懐かしくて涙が出る」
そんな感想を多くいただきます。
「琴線」とは、心の奥にある感動の糸であり、箏の弦そのもの。
ここは、箏Remedist・中しまりんが、音楽心理療法や量子力学の視点でその「不思議」を紐解く場所です。
脳が安らぐ周波数から、細胞を震わせる振動まで。
音が持つ「見えない力」を可視化し、あなたの心身を美しく調律するための実験室(ラボ)へようこそ。
声が紡ぐ「つながり」と「居場所」ー音声メディアを深読み!
音声メディアの人気が急上昇!
今回は、少し、箏と音楽から離れたお話を。
最近、「音声メディアが今、盛り上がっている」という記事や話を耳にすることが増えました 。
近年、音声メディアの市場規模は確実に拡大しています 。
例えば、株式会社オトナルと朝日新聞社が共同で、2025年12月に10,000人を対象に実施した
「第6回ポッドキャスト国内利用実態調査」によると、
月1回以上ポッドキャストを聴くアクティブユーザーの割合は18.2%に達しています 。
特に15〜19歳では40.5%、20代では28.8%と、若年層への浸透が顕著です 。
全年代の利用率ではNetflix・Facebook・雑誌・ABEMAを上回る結果となっており、
特に15〜29歳の層に絞るとTVerやTikTokの利用率をも上回っています 。
もはや「ニッチな趣味」から主流のメディアへと移行しつつあることがわかります 。
視覚がないからこそ見える「人となり」
なぜ、私たちはラジオなどの音声メディアにハマるのか、
その入り口は、見た目ではなく、声の情報だけであることです 。
視覚情報がない分、純粋に話の内容に集中でき、声のトーンや間合いから飾らない「人となり」が伝わってきます 。
運転しながら・家事をしながら気楽に聴ける、リスナーの投稿に共感して、見知らぬ誰かと「つながる」感覚も生まれる 。
音声メディアには、テキストや映像にはない独特の「体温」があります 。
それは声が持つ、言語を超えた情報量——音色、間、息づかい——によるものではないかと、私は感じています 。
プロの視点が語る「最強説」
そんな折、元TBSラジオプロデューサー・ハシPこと、橋本吉史さんが、2026年3月に
『ラジオ最強説』(イースト・プレス)を上梓されました 。
数々の人気番組を手がけてきた橋本さんが、「なぜラジオは最強コンテンツなのか」を徹底的に言語化した一冊です 。
本書には、こんな記述があります 。
”ラジオとは究極的には「コミュニティ」や「居場所」を作ることなのでは?〜(中略)〜本質はすごく精神的な話だなと”
パーソナリティが「素の自分」でやるスタンスでありながらも、
一方的に発信するのではなく、リスナーが一緒になって参加する連帯感がある 。
リスナー同士が意見を交換したり、居場所を感じたりするための「ハブ=結節点」として番組が存在し、
結果として番組そのものが「リスナーの居場所」になっていく 。
ラジオとは「個人のパーソナルな部分に深く寄り添うメディア」です 。
マスメディアでありながら、常に「1対1」の関係性を築き、リスナーの日常の孤独や喜怒哀楽を肯定してくれる場所 。
嘘がつけない「声」という媒体だからこそ、パーソナリティの本音とリスナーの本音が交差する
「安全なコミュニティ」が生まれるのです 。
心のベースキャンプとしての「安心・安全な居場所」
橋本さんは、ラジオの本質を「安心・安全・受容」という言葉で表現しています 。
興味深いことに、これは私が学んだ音楽心理療法の中でも非常に重要視される要素です 。
ジャンルは違えど、「精神的なベースキャンプ」の根底には共通するものがあるのだと、深く頷きました 。
実は私自身、以前から音声配信の世界に魅了されている一人です 。
私が本格的にラジオにハマったのは、大人になってから 。
きっかけは、入籍した日、夫が「今日入籍したことをラジオに投稿した」という会話からでした 。
「え、何に投稿したの? そのラジオ面白いの? 」
そんなひょんな流れで、TBSラジオの『小島慶子キラ⭐︎キラ』を聴いたのがすべての始まりです 。
気がつけば、すっかりラジオの世界に魅了されていました 。
後続番組の『たまむすび』に至っては、自分でもメッセージを投稿し、番組のイベントにも足を運ぶほどに 。
1週間、ほぼ毎日ラジオとともに過ごすという立派な「ラジオオタク」へと成長したのです 。
私にラジオの魅力を教えてくれた夫は、私と出会う前の海外赴任中、孤独な毎日を過ごしていた時に日本のラジオポッドキャストに深く救われていたそうです 。
こうして「聴く側」として音声メディアの魅力を知った私は、現在では自ら配信も行っており、
音楽仲間と好きなことをただただゆるく語り合う『たのしげナイトデトックス』(不定期配信)と、
富山県の美味しいものをお供に、ゲストをお迎えしておしゃべりする番組『スナックちゃべ』(毎週金曜夜)という、
2つのポッドキャスト番組を配信しており、この分野にはとても強い関心を持っています 。
(ちなみに『スナックちゃべ』には、先ほどご紹介した橋本吉史さんにもゲストでお越しいただきました)。
この「本音が共有できる居場所」としての機能こそが、時代やデバイスが移り変わっても色褪せない、
音声メディア最強の武器なのだと、当事者としても腑に落ちました 。

進化するラジオと、私たちの新しい居場所
橋本さんは本書の中で、「ラジオの水平思考」という言葉を用い、
その可能性を拡張していくことの重要性について触れています 。
長い歴史を持つ「ラジオ文化」を土台としながら、その中にポッドキャストという新しい形式が内包され、
ラジオというメディアそのものが今、大きく進化し続けているのです 。
電波に乗って不特定多数に届く地上波ラジオに対し、ポッドキャストはよりターゲットが絞られるのが特徴です 。
だからこそ、同じ思考や嗜好を持つ人たちが深くつながり合う「純度の高いコミュニティ」としての機能がより色濃く発揮されます 。
さらに、前述の2026年の「第6回ポッドキャスト国内利用実態調査」では、
「ポッドキャストユーザーの約7割が、月1回以上ビデオポッドキャスト(映像付きのポッドキャスト)を視聴している」
という興味深いデータも示されました 。
音声のみという枠組みさえも飛び越え、視覚も交えた新たな形への拡張がすでに始まっています 。
時代に合わせてメディアの形や楽しみ方が変わっていくように、私たちリスナーや発信者自身もまた、
新しいつながり方や心の居場所を見つけ出していくのでしょう 。
ラジオも、人も、進化する 。
だからこそ、音声メディアの世界はこんなにも温かく、面白く、これからも耳が離せないのだと思います 。
連載第3回目はコチラから。
【出典・参考・関連リンクなど】
- 『ラジオ最強説』 橋本吉史著(2026 イースト・プレス)
- オトナル・朝日新聞社「第6回 PODCAST REPORT IN JAPAN ポッドキャスト国内利用実態調査」(2026年2月)
- スナックちゃべ(Podcast)
深読みポイント
- 視覚情報がない音声メディアは、飾らない人となりが伝わり、リスナーの安心・安全な居場所として機能する 。
- ラジオ文化はポッドキャストや映像付きへと進化し、より共通の嗜好を持つ人々が深くつながる空間になっている 。
プロフィール
中しま りん / 箏アーティスト・箏Remedist
富山県出身。5歳より箏を始める。シンガーソングライターを経て、2004年より箏アーティストとして本格的に活動を開始。ピアノやギターとのアンサンブルを軸に、伝統の枠を超えた音楽制作を行う。
2025年には、自作曲『爛漫』がゆずの楽曲『尤』(テレビアニメ『ポケットモンスター エピソード:メガシンカ』主題歌)のモチーフに採用されたほか、日本テレビ系ニュースのお天気テーマへの楽曲起用、文化庁事業による全国100校以上での公演など、国内外で幅広く活動。

こうした多彩な表現活動を展開するなかで、近年は「音と人の深層」への探求を深める。
ドイツ・ハンブルク国立音楽大学提携プログラムによる音楽心理療法を学び、現地の病院で実習に参加するなど研鑽を積む。現在は、箏の持つ音響特性に加え、演奏時の脳機能や身体運動、心理的プロセスなど、多角的な視点からそのメカニズムを統合的に捉え直し、自閉症児へのセッションなど実践的なアプローチを行っている。
演奏家の枠を超え、箏を「心と身体を整えるエネルギー療法のツール」として再定義するその活動は、伝統文化の新たな可能性を広げている。
ジャズピアニストとのユニットYAMATO LOUNGE、絵本読み聞かせコラボ、マルチメディアユニットCOMNAL、ポッドキャスト番組「スナックちゃべ」のパーソナリティ、Otonamiでの寺院体験演奏など、多岐にわたる活動を通じて現代における癒しと再生を提案している。
リンク
琴線Lab HP
大人のための非日常体験Otonami 箏体験
https://otonami.jp/experiences/nakashimarin-2ryomon


