【連載①】中しまりんの琴線深読みLab ~脳・身体・細胞を調律する、箏と音の科学~

「箏のことは知らないのに、なぜか懐かしくて涙が出る」
そんな感想を多くいただきます。
「琴線」とは、心の奥にある感動の糸であり、箏の弦そのもの。
ここは、箏Remedist・中しまりんが、音楽心理療法や量子力学の視点でその「不思議」を紐解く場所です。
脳が安らぐ周波数から、細胞を震わせる振動まで。
音が持つ「見えない力」を可視化し、あなたの心身を美しく調律するための実験室(ラボ)へようこそ。
虫の音・邦楽器はなぜ「脳力」を呼び覚ますのか?脳科学が示唆する日本人の特殊な脳構造
~デジタルノイズとストレス過多の時代に、世界がまだ知らない「和の音の力」~
現代社会は、情報とノイズに溢れています。スマートフォン、SNS、街の喧騒――私たちは常に何かしらの音を聴き、デジタルな刺激にさらされ続けています。終わりのない情報の波に、心身の疲労は増し、今や世界中で「デジタルデトックス」や「マインドフルネス」が求められるようになりました。
音楽を愛する箏アーティストとして、そしてドイツの音楽心理療法を学び、現在は量子力学やエネルギー療法の視点からも音を探求する者として、私には一つの確信があります。それは、日本の伝統楽器である「箏」こそが、現代のストレス社会に対する最強の「デトックス」となり、魂を「再生」させるツールになり得る、ということです。
しかし、なぜ「箏」が、そしてその「音」が、私たちの細胞を再生へと導き、活力を呼び覚ますと言えるのでしょうか?その鍵は、日本人特有の「音の聞き分け方」に隠されています。実は私たち日本人は、普段耳にする「虫の音」や「動物の鳴き声」を、西洋の人々とは全く異なる脳の回路で処理している――そんな驚くべき脳科学の研究結果があるのをご存知でしょうか。
本記事では、『あらゆるニュースを深掘りする』というジャーナル視点で、日本人の脳の特性と和楽器の持つ特別な力を、科学と文化の両面から解き明かします。
音の処理は人種で違う?角田忠信博士の衝撃的な発見
私たちが箏の音を深く受け止めるメカニズムを知るために、まず触れておきたいのが、東京医科歯科大学名誉教授・角田忠信博士による40年以上にわたる研究です。博士は、人間の聴覚刺激が左右の大脳半球でどのように処理されるかについて、独自の研究に基づき、ある重要な説を提唱しました。
従来の脳科学では、「言語」は主に左脳で、「音楽や機械音」などの非言語的な音は右脳で処理されるというのが定説でした。しかし、角田博士の研究によれば、日本語を母国語とする人(およびポリネシア語など母音優位な言語を話す人)は、音の処理において世界的に見ても極めて特異な傾向を持つ可能性が示唆されたのです。
日本人型脳の特徴:邦楽器音・虫の音が「言語脳」で処理される
博士の実験結果の核心は、以下の点に集約されます。
- 西洋言語話者(西洋人型):言語は「左脳」で処理。音楽、機械音、環境音、そして虫の音や動物の鳴き声は、「右脳(音楽・雑音脳)」で処理。
- 日本語話者(日本人型):言語は「左脳」で処理。しかし、これらの話者の場合、「母音」「虫の音」「動物の鳴き声」、そして「邦楽器の音(箏、尺八、三味線など)」までもが、言語と同じ「左脳」で処理される傾向が非常に強いと指摘されています。
つまり日本人にとって、秋の夜長に響く虫の音や箏の音色は、単なる背景音(ノイズ)ではなく、無意識のうちに「言葉」に近いものとして捉えているのです。
左脳で聴くからこそ届く、「言葉にならないメッセージ」
では、箏の音や自然音が「左脳(言語脳)」で処理されることには、どんな意味があるのでしょうか?ここに、箏が現代人の「再生」をもたらす最大の理由があります。
通常、西洋楽器の音楽は右脳で「感覚」として受け取られます。 しかし、日本人の脳は箏の音色を、言葉を理解する左脳でキャッチします。これは、箏の音が、論理的な思考や「心の防御壁(メンタルブロック)」をすり抜けて、ダイレクトに脳へ届いている可能性を示唆しています。音楽心理療法の視点から見ると、これは非常に興味深い現象です。私たちが誰かの「言葉」を聞くとき、内容を分析したり、時には反発したりと、無意識にバリアを張ることがあります。しかし、箏の音は「言葉」としての機能(左脳処理)を持ちながら、具体的な意味(セリフ)を持ちません。
つまり、箏の音は「言葉ではない言葉」として、理屈を超えて心と身体に直接語りかけ、頑なになった緊張を内側からほどいていくのです。 それは単なるBGMではなく、あなたに寄り添う「心の対話者」のような存在なのかもしれません。

身体性への回帰:細胞を震わせる「振動」の力
箏による「再生」は、脳での処理だけではありません。もう一つ重要なのが、「振動」です。 量子力学の世界では、「万物は振動している」といわれます。私たちの身体、細胞の一つひとつも、固有の周波数で常に振動しています。ストレスや疲労で心身が不調になる時、この細胞の振動(リズム)が乱れている状態とも言えます。
箏は、演奏者が指に「爪」をはめて弦を弾き、その振動が楽器本体、そして床や空間全体へと広がります。
以前、私が養護学校で演奏した際、忘れられない出来事がありました。聴覚が弱いある児童が、座席ではなく箏のすぐそばまで来て、演奏中ずっと楽器にそっと手を触れていたのです。その子は、耳で音を「聴く」のではなく、皮膚や指先を通じて「振動」を全身で受け止め、自分自身の乱れたリズムを調律(チューニング)しようとしていたのかもしれません。
この体験は、箏が持つ力が、聴覚の有無さえも超えて、すべての人間の生命力に直接作用する証拠だと確信させてくれました。
視覚、触覚、そして細胞レベルでの体感。この全身での「振動の受容」と、左脳による「言語としての深い認識」が組み合わさることで、箏の音は単なるリラクゼーションに留まらず、私たちの生命力を内側から活性化させる「再生のスイッチ」となるのです。
箏の音に秘められた、人類共通の「覚醒」の土壌
角田博士の研究は、私たち日本人が音を特別に受け止める「和の土壌(脳の構造)」を持っていることを示しました。しかし、これは「箏の力は日本人にしか効かない」という意味ではありません。箏が放つ豊かな倍音と振動は、国籍や言語に関係なく、すべての人間の細胞を震わせ、魂を「覚醒」させる普遍的な力を持っています。
現代社会というデジタルノイズの嵐の中で、論理や思考に疲れ切った私たち。そんな現代人に今こそ必要なのが、この理屈を越えた「和の音の力」です。
深読みポイント
- 左脳の秘密:日本人は箏の音を「音楽」ではなく、心に届く「言葉」として聴いている。だからこそ、心の壁を越えて私たちを再生へと導く。
- 全身の共鳴:音は「聴く」だけでなく、細胞で「浴びる」もの。乱れた心身の周波数を、箏の振動が整えてくれる。
出典
『日本人の脳ー脳の働きと東西の文化』角田忠信著(1978 大修館書店)
『日本語人の脳ー理性・感性・情動、時間と大地の科学』角田忠信著(2016 言叢社)
プロフィール
中しま りん / 箏アーティスト・箏Remedist
富山県出身。5歳より箏を始める。シンガーソングライターを経て、2004年より箏アーティストとして本格的に活動を開始。ピアノやギターとのアンサンブルを軸に、伝統の枠を超えた音楽制作を行う。
2025年には、自作曲『爛漫』がゆずの楽曲『尤』(テレビアニメ『ポケットモンスター エピソード:メガシンカ』主題歌)のモチーフに採用されたほか、日本テレビ系ニュースのお天気テーマへの楽曲起用、文化庁事業による全国100校以上での公演など、国内外で幅広く活動。

こうした多彩な表現活動を展開するなかで、近年は「音と人の深層」への探求を深める。
ドイツ・ハンブルク国立音楽大学提携プログラムによる音楽心理療法を学び、現地の病院で実習に参加するなど研鑽を積む。現在は、箏の持つ音響特性に加え、演奏時の脳機能や身体運動、心理的プロセスなど、多角的な視点からそのメカニズムを統合的に捉え直し、自閉症児へのセッションなど実践的なアプローチを行っている。
演奏家の枠を超え、箏を「心と身体を整えるエネルギー療法のツール」として再定義するその活動は、伝統文化の新たな可能性を広げている。
ジャズピアニストとのユニットYAMATO LOUNGE、絵本読み聞かせコラボ、マルチメディアユニットCOMNAL、ポッドキャスト番組「スナックちゃべ」のパーソナリティ、Otonamiでの寺院体験演奏など、多岐にわたる活動を通じて現代における癒しと再生を提案している。
リンク
琴線Lab HP
大人のための非日常体験Otonami 箏体験
https://otonami.jp/experiences/nakashimarin-2ryomon
最新情報・イベント出演情報
YAMATO LOUNGEライブ
日時:3月6日(金)
19時開場・19時30分開演
出演:YAMATO LOUNGE(中しま りん/箏 、後藤魂/ピアノ)
場所:アートワインサロンEnDehors (アン・ディオール)
住所: 東京都港区新橋5-29-4 吉岡ビル 2F
最寄駅:JR 新橋駅徒歩 6分
電話番号: 03-6627-0725
※詳細はお店にお問い合わせください※


