若者の平均年収を深読み!「失われた30年」の影響は?

今回読み解く記事
Xトレンドより
30年で給料は下がった。それでも生活が苦しい本当の理由
若者の平均年収が、30年前と比べて下がっている──。
そんな比較データが、あらためてXで話題になっている。
1990年頃は約455万円に対し、2023年は約438万円。
消費税が3%だった時代のほうが、平均給料は明らかに高かった。
この数字を見て、多くの人が「なぜこんな状況になっているのか?」と感じるのではないだろうか。
論考を進める前に、ここでひとつ言葉の整理をしておきたい。
統計で語られる年収の多くは、名目年収と呼ばれる。
物価の変化を考慮しない「額面の給料」のことだ。
この名目年収で見ても、日本の平均給料はこの30年で増えていない。
先に述べたよう、むしろ平均では下がっている。
一方で、消費税は3%から10%へ。
社会保険料も上昇し、家賃や教育費も右肩上がりだ。
名目年収が伸びない中で、物価上昇と消費税をはじめとする税負担が重なれば、実際に使えるお金が減るのは当然。
それでも体感の苦しさが、数字以上に大きいのはなぜか?
理由は、賃金そのものよりも、社会のコスト配分の設計にある。
実際の負担を数字で見てみると、状況はさらに分かりやすい。
1990年代に3%だった消費税は10%へ。
社会保険料の負担も大きく変わった。
月収30万円の場合、国民年金は8400円から1万6520円へ、厚生年金は4万2900円から5万4900円へと増加。
健康保険料も約2万5200円から3万円へ、さらに介護保険料が新たに加わっている。
物価指数は1990年頃の約89.6から、2023年には105.6へと上昇。
教育費は2000年代初頭の約510万円から、現在は約596万円へと増えている。
つまり、給料は下がるか横ばいのまま、税と社会保険料、そして生活に欠かせない支出だけが確実に積み上がってきた。
家計が苦しくなるのは、偶然ではない。
① 税・社会保険の負担設計
日本はこの30年で、「税」や「社会保険料」で確実に負担が大きくなっていった。
上がり続ける社会保険料は、所得に応じて自動的に差し引かれてしまう。
独身や子育て前後の現役世代は減免が少なく、ほぼフル負担になる。
結果として、働いても手取りが増えにくい構造が固定化されてしまった。
② 賃金が伸びる前提のまま運用された制度
社会保険料率、消費税、他もろもろの税金。
これらの多くは、賃金が緩やかに上がることを前提に設計された制度である。
ところが、日本では賃金が上がらないまま、制度だけが自動更新され続けている。
生活の余裕が削られていくのは、ある意味、当然の帰結だった。
③ リスクを個人に負担させる設計
かつては、企業が担っていたことが多くあった。
それは終身雇用、年功賃金、社内保障。
それらが、生活のクッションとなり、生涯安心を約束されたようなものだった。
しかし雇用形態が多様化する一方で、老後資金、教育費、医療、介護への備えは、個人の自己防衛に委ねられるようになった。
それでも社会保険料の設計は、「会社員モデル」のまま維持されている。
このねじれが、現役世代の負担感をさらに強めている。
大事なのは手取りを増やし、税や社会保険のあり方を見直すこと
このまま賃金の現実と噛み合わない制度を放置すれば、
日本は「生活の余白がない国」になっていく。
いや、もう既になっているのかもしれない。
今、必要なのは、賃金を引き上げること、そして税や社会保険のあり方を見直し、手取りを増やすこと。
この二つを同時に進めなければ、生活の実感・質は変わらない。
個人の努力で埋められる差には限界がある。
社会の設計を、賃金の現実に合わせて更新できるかどうか。
それが、これからの日本を左右する。
深読みポイント
- 若者世代が苦しいのは、賃金の現実と税・社会保険の前提がズレたまま更新され続けてきたから。
- 賃金アップ&税・社会保険の見直しを両輪で行うことが必要。


