「居酒屋の倒産が過去最高」を深読み!理由は「飲み方の再編成」?

変わったのは「飲み方」そのもの


居酒屋の倒産が過去最多ペース――。

そんなニュースが流れると、必ず出てくるのが「若者の酒離れ」という言葉だ。

だが、本当にそうなのだろうか?

実際には、日本酒イベントやクラフト酒市場は活況を見せ、高価格帯ウイスキーやペアリング文化も人気を集めている。
つまり起きているのは、「酒文化の衰退」ではない。

変わったのは、「飲み方」そのものなのだ。


なぜ居酒屋は苦しくなったのか─ 値上げだけではない「構造変化」

居酒屋の経営が厳しくなったのは、以下の理由が挙がる。

食材費・光熱費・人件費の高騰

飲み放題価格の上昇

可処分所得の低下

二次会文化の縮小

こう見ると、表面的には単なる「物価高」が原因に見える。

確かに今回の居酒屋倒産の主因ではあるのだが、若者に焦点を当てると本質はそれだけではない。

かつての居酒屋は、
「安く大人数で飲む」
ことで成立していた。

しかし今は、そうした飲み会そのものが減っている。


コロナが変えた「飲み会の当たり前」─ 若い世代は“飲み会文化”を経験していない

飲み会文化を大きく変化させたのが「コロナ」である。

コロナ禍で、多くの若者は

  • 大学での飲み会
  • 新歓コンパ
  • 忘年会・新年会

を経験しないまま社会人になった。

その結果、
「飲んで仲良くなる・コミュニケーションを取る」
という感覚そのものが薄れてしまった。

さらにオンライン化によって、

  • LINE
  • Discord
  • Zoom
  • SNS

など、飲酒以外のコミュニケーション手段が定着。

人間関係を築く方法が、多様化したのだ。


若者は“酒”そのものを嫌っているわけではない─ 変わったのは「飲む理由」

かといって、若者が酒そのものを嫌悪しているわけではない。

実際には、

  • クラフトビール
  • 日本酒イベント
  • ナチュールワイン
  • ペアリング
  • モクテルなどのノンアル文化

は広がっている。

つまり、
「安ければ飲む」のではなく、「価値があるからと納得したから飲む」ようになったのだ。

そう、若い世代は、酒そのものを否定しているのではない。

「意味のない飲み方」を避けているのだ。


「飲む場所」の選択肢が増えた─ 居酒屋だけが“酒の場”ではなくなった

近年は、居酒屋以外で気軽に酒を楽しめる場所が増えていることも、居酒屋が苦戦の一因と考えられる。

たとえば、牛丼チェーンや中華チェーン、ファミリーレストランなどでも、低価格でアルコールを提供する店が増加。
しかも、こうした店は本来の専門業態を持っているため、料理の満足度が高い。

「軽く飲みたい」「少しだけつまみたい」という需要に対して、非常に相性が良いのだ。

さらに、一人でも入りやすい点も大きい。
居酒屋の場合、どうしても“グループ利用”のイメージが強い。
一方、チェーン店やカフェでは、一人飲みに対する心理的ハードルが低い。

加えて近年は、カフェ業態でもハッピーアワーを設け、若い世代を取り込もうとする動きが増えている。
昼はカフェ、夜は軽いアルコール提供へ――。
こうした業態のボーダレス化も進んでいる。

つまり現在は、「酒を飲む場所」が居酒屋だけではなくなったのだ。

これは単純な“酒離れ”ではない。
むしろ、アルコール需要そのものが、短時間化・少人数化・分散化しているのである。

生き残る店は「体験」を売っている─ “ニッチ”が武器になる時代

今、支持されている店には共通点がある。

  • 店主の個性
  • ストーリー
  • 専門性
  • 少人数空間
  • 一人飲み対応
  • 健康配慮
  • ノンアルが充実

など、「その店に行く理由」が明確なのだ。

単なる「安い居酒屋」は厳しい。
逆に、「ここでしか味わえない「ここでしか体験できない」を持つ店は強い。

居酒屋の苦戦は「日本人の変化」でもある─ 飲みニケーションの終焉?

かつての日本社会は、

「同じ空間で長時間過ごす」ことで関係性を築いていた。

しかし今は、

  • タイパ重視
  • 多様性
  • ハラスメント意識
  • オンライン化

によって、人との距離感そのものが変わっている。

つまり居酒屋の苦戦は、
飲食業界だけの問題ではない。

それは、「日本人のつながり方」そのものの変化なのだ。