なぜ人は酒を飲むと、自分を大きく見せようとするのか?を深読み!

今回読み解く記事
オリジナル
酒席ではじまる過去の栄光話
「昔は部下が200人いてね」
「若い頃はモテまくって、毎日デート相手が違っていた」
「〇億稼いでいたんだよね」
酒席でごくたまに聞く昔の栄光話。
もちろん本当の話なのだろう。
ただ、なぜ人は酒を飲むと、自分を大きく見せたくなるのだろうか?
この現象は、心理学で説明がつく。
アルコールは自己開示のハードルを下げる
アルコールには脳の前頭前野の働きを弱める作用がある。
前頭前野は、感情や行動をコントロールする「理性の司令塔」だ。
その働きが弱まることで、
「こんなことを言ったら嫌われるかな」
「自慢話と思われるかな」
といったブレーキが一気に緩む。
心理学では、これを脱抑制(disinhibition)と呼ぶ。
つまり、お酒によって性格が変わるのではなく、普段は抑えている感情が表に出やすくなるのだ。
では、酒席で表に出やすい感情とは何だろうか。
そのひとつが、承認欲求である。
自慢話の正体は承認欲求
人には誰しも承認欲求がある。
認められたい。
評価されたい。
尊敬されたい。
これは決して悪い感情ではない。
むしろ人間に備わった自然な欲求である。
ただ、年齢を重ねるにつれ、その欲求を満たす機会は減っていく。
若い頃は昇進があった。
成果を評価される機会も多かった。
しかし定年が近づくと、肩書や役職は徐々に手放していくことになる。
そこで人は、過去の成功体験を語ることで、自分の価値を再確認しようとする。
酒席で武勇伝が増えるのは、そのためなのだ。
酒席では過去の栄光が語られやすくなる
若い頃は現在進行形の実績で自己呈示ができる。
ところが年齢を重ねると、どうしても過去の実績の比重が大きくなる。
すると、
「昔はすごかった」
という話が増えていく。
本人は自慢しているつもりではない。
自分の人生を説明しているだけなのだ。
そして酒席という場は、その人生を語ることが許される数少ない場所でもある。
だからこそ、人は酒を飲むと過去の成功体験や輝いていた時代の話をしたくなるのだ。
本当に自信がある人ほど聞き役になる
興味深いことに、心理学では「自己肯定感の高い人ほど他人の話を聞く傾向がある」とされる。
なぜなら、自分の価値を証明する必要がないからだ。
過去の栄光を語らなくても、自分自身を認めることができる。
酒席でも自然と聞き役に回れるのはそのためだ。
だかといって、武勇伝を語る人が自己肯定感の低い人というわけでもない。
酒席で過去を語るのは、自分の人生を振り返り、その価値を再確認する行為でもあるからだ。
つまり、自分を語る人と聞き役に回る人の違いは、
自信の有無ではなく、「自分の価値をどこで確認しているか」の違いなのだ。
酒は人を変えるのではなく、人を少しだけ大きく見せようとする
よく「酒を飲むと本性が出る」と言われる。
だが、私は少し違うと思っている。
酒は人を変えるのではなく、もともと心の中にあった感情を少しだけ大きく映すだけだと思う。
楽しい人はさらに楽しく、
寂しい人はさらに寂しく。
そして認められたい人は、少しだけ自分を大きく語りたくなる。
酒席で聞く武勇伝は、自慢話ではない。
「こんな人生を歩いてきたんだ」と誰かに理解してほしい気持ちの表れなのだ。
深読みポイント
- 武勇伝は「自慢」ではなく、「人生の棚卸し」である
- 本当に自信がある人ほど、自分を語らない


