アメリカで広がる「コンポスト葬」を深読み!

死んだら土になる? 米国で広がる「コンポスト葬」は日本でもできるのか?

「死んだら、土になる」

そんな新しい葬送方法が、米国で広がっている。

その名も「コンポスト葬」

正式には「Natural Organic Reduction(自然有機還元)」と呼ばれ、
火葬も土葬もせず、微生物の力によって遺体そのものを土へ還す方法だ。

米国ではすでに複数の企業がサービスを提供し、合法化する州も増えている。

しかし……、いったい、どうやって人間が「土」になるのだろう?

遺体を微生物の力で土へ還す

コンポスト葬の先駆けとして知られるのが、米シアトルの葬送企業「Recompose(リコンポーズ)」だ。

同社では、遺体を木材チップ、アルファルファ、わらなどとともに、
長さ約2.4メートル、高さ約1.2メートルの専用のスチール製容器に入れる。

そこで働くのが、植物や人間の体などに自然に存在する微生物だ。
容器内では微生物の活動によって温度が上昇し、約55℃以上の状態を少なくとも3日間維持する。
温度や酸素などを適切に管理しながら、遺体と植物素材を分解していく。

遺体を単に土の中へ埋めるのかと思っていたが、想像をはるかに超えた方法だった。
つまり、自然界で有機物が分解されて土へ戻る仕組みを、管理された施設の中で再現しているのだ。

遺体は処置後、微生物によって約5~7週間で大部分が分解される。
その後、人工関節やステントなどの非有機物を取り除き、
残った骨なども細かくしたうえで、さらに3~5週間ほど熟成させる。

全工程にかかる時間は、およそ8~12週間だ。

一人の人間から約454キロの土ができる

驚いたのが、完成する土の量だ。

Recomposeによると、一人の遺体からできる土は約1立方ヤード。
重さにすると約1000ポンド、キロにすると約454キロにもなる。

もちろん、もともとの人間の体重が何倍にも増えるわけではない。
工程の最初に大量の木材チップやわら、アルファルファなどを加えるため、それらを含めた最終的な土の重量だ。

完成した土は遺族が受け取ることができる。
庭の木や植物を育てるために使ってもいい。

すべて持ち帰る必要はなく、残りを自然保護活動に寄付し、
森林などの再生に使ってもらうこともできる。

「自分が土になり、その土が新しい植物を育てる」という発想なのだ。

費用は約7000ドル

気になる費用はというと、手が届かない値段ではなかった。

Recomposeの場合、基本料金は7000ドル。
現在の為替水準なら、日本円で100万円を超える程度になる。

この料金には、遺体を土へ変える工程だけでなく、葬祭ディレクターによる対応、
必要な書類手続き、完成した土の受け渡しなども含まれている。

決して安価とは言えないが、同社によれば、
米国で棺を使って埋葬する一般的な葬儀の費用と比べて、突出して高いわけでもない。

しかも墓地や墓石を必要とせず、その後の墓の管理も必要ない。
「死後にかかる費用」全体で考えると、リーズナブルといっても過言ではない。

米国では14州ですでに合法化

コンポスト葬を米国で初めて合法化したのは、ワシントン州だ。

2019年に認められ、その後、コロラド、オレゴン、バーモント、ニューヨークなどへ広がった。
2025年にはニュージャージー州も加わり、Recomposeによると、2026年8月現在、14州で合法化されている。

さらにイリノイ、マサチューセッツ、テキサス、ユタなど、多くの州で合法化に向けた法案が提出されている。

まだ全米で認められているわけではないが、
「人は死後、火葬か土葬か」という従来の二択に、新たな選択肢が加わり始めている。

日本でコンポスト葬はできるのか?

日本でコンポスト葬儀ができるのか?といったら、
現在の日本ではコンポスト葬を葬送方法として行うための制度は整っていない。

日本の「墓地、埋葬等に関する法律」では、
「埋葬」を死体を土中に葬ること、「火葬」を死体を焼くことと定義している。

また、埋葬や火葬には市町村長の許可が必要で、
埋葬は墓地以外、火葬は火葬場以外で行うことができない。

一方、コンポスト葬は遺体を専用施設で微生物によって分解し、土へ変える。
現在の日本の制度には、この方法に対応した許可制度や施設基準、衛生基準などが存在しない。

したがって、「コンポスト葬は禁止されている」と単純に言うより、
新しい葬送方法として法的に位置づける仕組みがまだないと考えたほうが正確だろう。

日本でも「墓を残さない」人は増えている

しかし、日本でも将来、コンポスト葬を希望する人は増えるのではないかと私は思う。

背景にあるのが、少子高齢化と家族構成の変化だ。

子どもがいない。
子どもが遠方に住んでいる。
墓を継ぐ人がいない。
子や孫に墓の管理を負わせたくない。

こうした事情から、「墓じまい」をする人も増えている。
墓じまいなどに伴って遺骨を別の墓や納骨堂へ移す「改葬」は、近年大きく増加している。
私もそうする予定だ。

一方で、墓石を持たない樹木葬や、管理を必要としない永代供養など、
従来の「家のお墓」とは異なる弔い方も広がってきた。

すでに日本人の死生観そのものが変わり始めているのだと思う。

そう考えると、「遺骨を残さなくてもいい」という選択肢が出てきても、不思議ではない。

墓地の確保や維持管理、継承者の問題を考えても、
コンポスト葬は単なる「珍しいエコ葬」ではなく、日本がこれから直面する社会問題ともつながっている。

私は「コンポスト葬」を選びたいと思った

さて、私はというと……、

「コンポスト葬がいい!」とすぐに思った。

私はもともと、墓を残したいという気持ちがあまりないというか、
自分の骨を残すことに執着がない。

死んだあとまで誰かに墓を守ってもらったり、
墓参りをしてもらったりしなくてもいい。

火葬されて骨になり、それをどこかに納めてもらうより、自分自身が土になってしまう。
そして、その土で木や植物が育つ。
そのほうが、ずっと自然に感じる。

何百キロもの土になると聞いたときには、さすがに「そんな大量に!?」と驚いたけれど。

自分だったものが、最後には人間だったことすら分からない土になる。
骨として残るより、自然の循環の中に混ざっていく。
私は、その潔さが好きだ。

今の時代、人はどう生きるかを選ぶようになった。
ならば、どう死に、死後に自分の体をどうするかについても、もっと選択肢があっていい。

日本でもいつか、「火葬しますか。それとも、土に還りますか?」と聞かれる時代が来るだろうか。
(何かファストフードみたいw)

もしその日が来たら、私は迷わず後者を選びたい。

参考:人間の堆肥化によってどれくらいの土壌が作られるのでしょうか? |再編成
   墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号) |厚生労働省