企業は「自分のAIを持つ側」へ? 米巨大法律事務所の決断

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アメリカの法律事務所が自前のAI用ハードウエアを保有?

生成AIを仕事で使う企業が増えている。

現在、多くの企業が利用しているのは、ChatGPTやGeminiなど、外部企業が提供する生成AIだ。
自社でAIそのものを開発するのではなく、サービスを契約して利用する。

そんな中、米国の大手法律事務所レイサム・アンド・ワトキンス(Latham & Watkins)が、一歩踏み込んだ取り組みを始めた。

NVIDIA(エヌビディア)のGPUサーバーを導入し、自ら管理する環境でAIを動かし始めたのだ。

英Financial Timesによると、大手法律事務所が自前のAI用ハードウェアを保有することが公になった先駆的な事例だという。

「自前のAIを持つ」とはどういうことか

ここで注意したいのは、レイサムがChatGPTのようなAIを一から開発したわけではないことだ。

利用するのは、すでに開発された「オープンウェイト」と呼ばれるAIモデル。
企業などが入手し、自ら管理するサーバーで動かすことができる。

たとえばChatGPTを利用する場合、AIはOpenAI側のシステムで動いており、
利用者が入力した情報もそこで処理される。
Geminiも同様に、Google側のシステムでAIが動く。

一方、オープンウェイトのAIモデルは、企業が自ら管理するサーバーに入れて、そこで動かすことができる。

レイサムが今回始めたのも、この方法だ。
AIそのものを一から開発したのではなく、すでにあるAIモデルを、自ら管理する場所で動かしている。

なぜ法律事務所がサーバーまで持つのか

大きな理由の一つが、情報管理だ。

法律事務所が扱うのは、訴訟、M&A、企業秘密など、極めて機密性の高い情報である。
外部の生成AIサービスを使えば、入力した情報は外部事業者が管理するシステムで処理される。

だが、自社管理のサーバーでAIを動かせば、機密情報を外部のAI事業者へ送らず、
自分たちが管理する環境内で処理できる。

もちろん、自社管理なら情報漏洩が絶対に起きないという意味ではない。
不正アクセスや人的ミスなどのリスクは残る。
それでも、重要なデータをどこで処理するかを自らコントロールできる意味は大きい。

外部AIか自社管理AIかではない

だからといって、レイサムがChatGPTなど外部のAIサービスを使わなくなるわけではない。
同事務所は外部AIも引き続き利用し、用途に応じて使い分ける方針だ。

外部の高性能なAIを利用する仕事もあれば、機密性の高い情報を自社管理の環境で処理する仕事もある。
さらに複数の選択肢を持っておけば、特定のAI企業の価格や利用条件が変わった場合にも対応しやすい。

「どのAIを使うか」だけでなく、「どこで動かすか」まで選ぶ。

企業のAI活用は、そんな段階へ進み始めている。

日本でも始まる「自社で動かすAI」

同じ方向の動きは日本にもある。

NTT西日本とエフサステクノロジーズは、NTTが開発した国産の大規模言語モデル「tsuzumi 2」と
GPUサーバーを組み合わせ、企業などが管理する環境内で生成AIを利用できるサービスを展開する。

ここでも、AIを利用企業が一から開発するわけではない。

AIを開発したのはNTT。そのAIを利用企業が管理する環境で動かす。

外部のシステムに機密データを送らずにAIを利用できることから、
官公庁、金融、製造、研究機関などでの利用が想定されている。

AIを「借りる」だけではない時代へ

これまで企業にとって生成AIの導入とは、
「ChatGPTを使うか」「Geminiを使うか」といった外部サービス選びが中心だった。

そこへ、新たな選択肢が加わり始めた。

外部のAIサービスを利用する。
既存のAIを自社管理の環境で動かす。
そして、仕事によって両者を使い分ける。

すべての企業が自前でGPUサーバーを持つ必要があるわけではない。
高度な設備や運用する人材も必要になる。

それでも、機密情報や独自のデータを大量に持つ企業にとって、
「どのAIを選ぶか」だけでなく、「AIをどこで動かすか」も選択肢になった意味は大きい。

企業とAIの関係が、また一段変わろうとしている。