韓国の若者が日本酒を選ぶ理由を深読み!「酔うための酒」から「語り合う酒」へ


韓国で日本酒が大人気に

韓国で「酒離れ」が進んでいる。

韓国全体の酒類出荷量は減少傾向にある。
ところが、その流れに逆行するように伸びている酒がある。
日本酒だ。

FNNプライムオンラインによると、日本酒の輸入量は5年前と比べて3倍以上に増加。
9月に韓国第2の都市・釜山で開かれた「酒フェスティバル」には、日本から54の酒蔵が集まり、
800人以上が来場した。会場で目立っていたのは20~30代の若い世代だった。

一時的なブームというわけでもない。

農林水産省の資料によれば、2025年の韓国向け日本酒輸出額は44億円で前年比17.4%増。
数量も5483キロリットルに達した。

輸出額では中国、米国、香港に次ぐ4位となっている。

韓国貿易協会の統計でも、2025年の日本産日本酒の輸入額は2784万ドルと過去最高を更新。
前年比21.2%増だったのに対し、輸入重量は11.8%増だった。
金額の伸びが数量を上回っている点も興味深い。

低価格の酒から「プレミアム地酒」へ

ではいったい韓国で何が起きているのか?

日本酒専門の輸入会社「一路SAKE」はFNNの取材に対し、
以前は大量生産された低価格品が市場の多くを占めていたが、
現在は高価格帯のプレミアム地酒へ変化していると分析している。

つまり、単純に「日本酒を飲む人が増えた」というだけではない。

何を選ぶかが変わっている。

その背景として浮かび上がるのが、韓国における飲酒文化そのものの変化だ。

韓国ではかつて、職場など大人数での会食と酒が密接に結びついていた。
しかし、コロナ禍を経て、そうした飲み方にも変化が起きた。

今回取材を受けた30代の参加者も、以前の韓国には会食文化や団体文化が多かったものの、
最近はそれが薄れつつあり、「量より質」を重視する雰囲気の中で日本酒が注目されているのではないかと話している。

ここに、韓国で日本酒が伸びている理由を考えるヒントがありそうだ。

「飲んで酔う」だけではない酒

今回のニュースで、特に印象に残る人物がいる。

日本酒が好きになり、今では毎月のように日本を訪れて酒を探しているという会社員のイム・ホンソクさんだ。
自宅の冷蔵庫には97本もの日本酒が並ぶという。

彼は、日本酒と出会って酒との付き合い方が変わったと話している。

韓国の酒が「飲んで酔うため」のものだったとすれば、
日本酒は夫婦でもっと話をしたり、友達のように過ごしたりするための酒になったというのだ。

ここが面白い。

彼が評価しているのは、アルコール度数でも価格でもない。

酒によって生まれる「時間」なのである。

酔うことを目的にたくさん飲むのではなく、おいしい酒を選び、
料理と一緒にゆっくり味わいながら誰かと話す。
「量から質へ」という変化は、酒そのものの品質だけを意味しているのではない。

酒を飲む時間の質まで変わっているのだ。

日本酒は「選ぶこと」も楽しめる

もう一つ、日本酒には現代の飲み方と相性のいい特徴がある。

地域や蔵、米、酵母、造り方などによって味わいが異なり、銘柄の背景には土地や造り手の物語がある。
釜山のイベントを訪れた20代の参加者からも、
日本の地域を旅しているような感覚を味わえることが魅力だという声が出ている。

単に「酔える酒」を買うのであれば、そこまでの情報は必要ない。

しかし、少量をゆっくり楽しむようになると、
「今日は何を飲もう」「どこの酒を選ぼう」という行為そのものが娯楽になる。

日本酒は、そんな飲み方と相性がいい。

興味深いのは、こうした日本酒の価値を、いま韓国の若い世代が見いだしていることだ。

若者に日本酒を飲んでもらうヒント

一方、日本では長年、「若者の日本酒離れ」が課題として語られてきた。

そのため、低アルコール化や甘口の商品、目を引くラベルや小容量化など、
若い世代が手に取りやすい商品をつくる試みも続いている。

もちろん、そうした商品開発は重要だ。

しかし、韓国の若い世代が日本酒にひかれている理由をたどっていくと、日本の市場にもヒントが見えてくる。

日本では長年、「若者の日本酒離れ」が課題として語られてきた。

若者に伝えるべきなのは、「どんな日本酒を造るか」だけではない。

韓国の若者たちの声から見えてくるのは、日本酒そのもののおいしさに加えて、
酒を囲む時間にも価値を感じていることだ。


夫婦で話す。
友人と料理を囲む。好きな一本を探す。
酒蔵のある土地を訪ねる。

日本酒をきっかけに、楽しみはその先へと広がっていく。

ならば、日本酒を一本の商品として売るだけでなく、
日本酒のある時間や体験までどう伝えるかも重要になってくる。

「酔うための酒」から「語り合う酒」へ。

韓国で若い世代が日本酒を選び始めた背景には、
日本酒の海外市場だけでなく、これからの酒のあり方を考えるヒントがありそうだ。