繁盛店のヒミツを深読み!「人件費は削ったら負け」の理由

「削りやすい場所」から削って、本当にいいのか
物価高や人手不足の影響もあり、飲食店経営は年々厳しくなっている。
居酒屋にいたっては、倒産件数が過去最高だという。
そんな中、多くの店がまず見直すのが「人件費」だ。
スタッフの人数を減らす。
ベテランではなく安価な人材に置き換える。
オペレーションを簡略化する。
最近は、助成金制度などを背景に、外国人スタッフ中心の店もかなり増えた。
私が先日行った店も、外国人スタッフが8割強だった。
もちろん、それ自体が悪いわけではない。
実際、とても丁寧で感じのいいスタッフも多い。
ただ一方で、店全体の空気感や接客の質が大きく変わってしまった店があるのも事実だ。
料理は変わらない。
酒も変わらない。
なのに、なぜか足が遠のく。
その理由を考えた時、改めて思う。
「酒場は、料理や価格だけで選ばれているわけではない」のだと。
人は「また会いたい」を理由に店に通う
私にも長年通っているバーがある。
もちろん、酒がおいしいというのもある。
知識も豊富だし、居心地もいい。
他にもこんな理由がある。
家に帰る前にリセットしたい。
ちょっとだけ話を聴いてもらいたい。
あの空気の中で飲みたい。
そう、そのバーに通うのは、単に酒を飲みたいから通っているわけではない。
酒を飲みたいだけなら、コンビニで買って家で飲んだほうが断然安くあがる。
ではなぜ、その店に通うのか?
主たる理由はただ1つ。
その店の「人」に会いたいからだ。
実際、長く愛される店には、必ず「客を魅了する人」がいる。
そして、料理だけで語られる店より、「あの人がいるから行く」という店のほうが、不思議と記憶に残る。
スタッフの空気が変わると、店の価値も変わる
逆に、足が遠のいた店もある。
理由は単純で、スタッフの質が明らかに変わったからだ。
酒や料理のレベルは、そこまで落ちていなかった。
だが、そのスタッフから「ホスピタリティ」を見出すことができなかった。
まず笑顔がない。
器を聞きもせず勝手に下げる。
酒の説明が一切できない。
皿の置き方が雑。
店に滞在中、彼女の接客からは、「また来てほしい」という熱量を微量も感じなかった。
聞けば、その店は少し前に閉店したという。
「ああ、やっぱり」という言葉が口をついて出た。
結局、酒場は「人」なのだ。
どんなに酒がおいしくても、接客・居心地が悪ければ、人は離れていく。
逆に、多少狭くても、少し古くても、「また来たい」と思わせる店には、必ず「人の温度」がある。
AI時代だからこそ「人間味」が価値になる
最近はAI化や効率化が進み、接客もどんどんシステム化されている。
注文もタブレット。
おすすめもAI。
分析も自動化。
もちろんAIは便利だ。
私も仕事でAIはなくてはならない存在だ。
だが、それだけでは埋められないものがある。
「今日は少しお疲れですか?」
「髪切りましたか?お似合いですね」
「最近忙しそうですね」
こういう“空気を読む会話”は、やはり人間ならではだ。
今回の記事でも印象的だったのが、「0円でお客さまに喜んでもらえることは全部やる」という考え方だった。
名前を覚える。
左利きなら座りやすい席を勧める。
帰り際に声をかける。
どれもコストはかからない。
でも、される側はちゃんと覚えている。
人は、「自分を大事に扱ってくれた場所」を忘れないのだ。
酒場の「活気」は、人員削減では生まれない
では、実際に記事に出てくる店『立ち呑みあらし』はどうだったのか。
結果として、人件費を削らなかったことで売上を27%も伸ばしたという。
人件費を削るどころか、忙しい時間帯でもお客とのコミュニケーションが取れるよう、あえてスタッフを増員。
接客力を最大限に発揮できる体制を整えていた。
同店のように、お客との距離が近い小規模店では、「お客は店ではなく“人”につく」ことが示された結果である。
記事中、印象的だったのが、「元気な人のところにしか、人は集まって来ない」という考え方だった。
スタッフに余裕がなくなると、接客はどうしても「作業」になる。
すると、その空気は不思議なくらい客にも伝わる。
前述した閉店した店のように。
逆に、繁盛している店ほど、客はもちろん、スタッフもまた楽しそうだ。
少し雑談ができる。
客の様子を常に見ている。
店全体に活気がある。
繁盛店は、まさに「人」が作っている。
だからこそ、数字だけを見て、むやみに人件費は削減しないほうがいい。
人は「大事にされた場所」に通う
料理がおいしいのは、今や当たり前。
映える店も増えた。
だが、その中で最後に差がつくのは、「また会いたい人がいる」ことである。
酒場は、単にアルコールを提供する場所ではない。
人に会いに行く場所でもある。
そう、繁盛店の最大の秘密は、「人」にコストをかけることにある。
スタッフに余裕を持たせる。
客と会話する時間を積極的に作る。
こうした積み重ねが、「また来たい」という空気を作り、リピーターを増やしていく。
AI時代になればなるほど、「人間味」の価値はむしろ上がっていく。
深読みポイント
- AI時代ほど、「人間味」が武器になる
- 「また会いたい」と思う人がいる店は繁盛する


