【連載6】中しまりんの琴線深読みLab ~脳・身体・細胞を調律する、箏と音の科学~

「箏のことは知らないのに、なぜか懐かしくて涙が出る」
そんな感想を多くいただきます。
「琴線」とは、心の奥にある感動の糸であり、箏の弦そのもの。
ここは、箏Remedist・中しまりんが、音楽心理療法や量子力学の視点でその「不思議」を紐解く場所です。
脳が安らぐ周波数から、細胞を震わせる振動まで。
音が持つ「見えない力」を可視化し、あなたの心身を美しく調律するための実験室(ラボ)へようこそ。
舵を握るのは自分〜シニアの住まいを深読み!〜
目黒のシニアレジデンスで感じた心躍るひととき
先日、東京・目黒にある「ブランシエール目黒」で演奏してきました。
こちらは、シニアレジデンス、いわゆる介護付き有料老人ホームです。
スタッフの方いわく、施設が目指すのは「クルーズ船で過ごすような日常」。
吹抜けのラウンジ、お酒もあるレストラン、人工温泉の大浴場、緑あふれるデッキテラス
-なるほど、上質な共用空間はどこか豪華客船の船内を思わせます。
今年度からは、新しくコンサート企画も始まったそうで、私も箏の音でささやかな彩りを添えてきました。
参加くださったお客様の中には、一緒に歌ってくださる方や、音楽に合わせて思わず踊り出す方もいらして、
私自身、とても楽しく演奏させていただきました。
本連載の第4回目で「昨今は音声メディアが人気で、それが今、映像へと進化してきている」というお話をしましたが、今回伺った施設を運営する長谷工シニアウェルデザインでも、これまで続けてきた『長谷工シニアウェルラジオ』を、放送4年目を機に、この5月から「みえるラジオ番組」としてYouTubeで最新情報などの発信を新たにスタートさせています。
施設の中だけで完結せず、こうした新しいメディアを通じて外の世界と繋がりを持つことは、
これからのシニアライフにおいて非常に魅力的なアプローチだと感じます。
シニアの住み替え先、大きくは「3つの選択肢」
さて、ひとくちにシニアの住まいといっても、その形態は様々です。
最近よく耳にする住み替え先を大きく分けると、次の3つです。
とくに自立〜軽度の段階では、健康寿命をのばし、アクティブな余暇を楽しむための、自由度の高い住まいといえます。

安心の裏側にある「シニアマンションの現実」
実は、私の母親も10年ほど前から同じような形態のシニアマンションに住んでいます。
娘の立場からいうと、年齢を重ねた母親が1人で暮らすより、程よく人の目が行き届き、
何かあればすぐ駆けつけてくれる環境はやはり安心です。
ただ、安心で快適な空間が約束されている一方で、
母の話を聞いていると「日々の暮らし」ならではの生々しいリアルも浮き彫りになります。
例えば、毎日の楽しみであるはずの食事。
当初提供されていたものから、いつの間にか金額や内容が変わってしまったそうです。
また、「周りは年寄りばかりだから、なんだか気が滅入る」とこぼすこともあります。
(母曰く、そういう方々の姿に自分自身を重ねてしまうのだそう)
さらに、マンション内の人間関係にも難しさがあるようです。
閉鎖的なコミュニティゆえに、気が合わない人がいると窮屈に感じることもあり、
施設内のアクティビティにはあまり参加していないそうです。
では、母が孤独かといえばそうではなく、代わりによく一緒に出かけているのは、お互いに深入りしない「仲の良い友人」だそうです。
余計なことはお互いに聞かず、ただ一緒にいて楽な関係。
シニアのコミュニティにおいては、物理的な近さよりも、こうした適度な距離感が心の平穏を保つ秘訣なのかもしれません。
命ある限り、心がワクワクし続ける生き方を
今回演奏させていただいた「ブランシエール目黒」は介護付きの施設であり、
入居者の方々の中には、元気にご自身の足で歩かれる方もいれば、介護を必要とされている方もいらっしゃいました。
身体の自由度や直面している現実は、人によってそれぞれ異なります。
だからこそ、「自分の意思で身体を動かせること」だけがすべてではないと、演奏を通して気付かされました。
私が箏を奏でた瞬間、みなさんの瞳が一斉に輝き、音楽に合わせて嬉しそうに表情をほころばせるあの光景。
たとえ身体が思うように動かなくても、誰かの手助けを必要としていても、
美しいものに触れて心が躍り出すエネルギーは、何一つ変わらないのです。
用意された素晴らしいアクティビティに積極的に参加して楽しむのも、あえてそこには参加せずに気の置けない友人と外へ出かけるのも、あるいは部屋で、例えば「みえるラジオ」などを通して外の世界を楽しむのも、すべてはその人自身の「心の選択」です。
命ある限り、ずっと心がワクワクしていられるように。
どんな環境に身を置こうとも、人生という旅の「心の舵」を自らの手で握り続けることこそが、真に豊かな老後なのだと思います。

連載第5回目はコチラから。
【出典・参考・関連リンクなど】
・ブランシエール目黒(長谷工シニアウェルデザイン)
・【長谷工シニアウェルラジオ】ブランシエール目黒〜みえるラジオ〜(YouTube)
深読みポイント
- 人間関係の距離感は「心の平穏を保つ秘訣」である:安心を求めて集まった場でも、近すぎる距離はかえって摩擦を生む。互いに干渉しすぎない「楽な関係」こそが、閉じた空間で穏やかな心でいられる支えとなる
- 「選ばない」こともまた、立派な自己決定である:手厚いサービスをすべて受けることが幸せとは限らない。自分の心地よさを基準に選び取る姿勢こそ、最後まで自分らしく生きる「心の健康」の証になる。
プロフィール
中しま りん / 箏アーティスト・箏Remedist
富山県出身。5歳より箏を始める。シンガーソングライターを経て、2004年より箏アーティストとして本格的に活動を開始。ピアノやギターとのアンサンブルを軸に、伝統の枠を超えた音楽制作を行う。
2025年には、自作曲『爛漫』がゆずの楽曲『尤』(テレビアニメ『ポケットモンスター エピソード:メガシンカ』主題歌)のモチーフに採用されたほか、日本テレビ系ニュースのお天気テーマへの楽曲起用、文化庁事業による全国100校以上での公演など、国内外で幅広く活動。

こうした多彩な表現活動を展開するなかで、近年は「音と人の深層」への探求を深める。
ドイツ・ハンブルク国立音楽大学提携プログラムによる音楽心理療法を学び、現地の病院で実習に参加するなど研鑽を積む。現在は、箏の持つ音響特性に加え、演奏時の脳機能や身体運動、心理的プロセスなど、多角的な視点からそのメカニズムを統合的に捉え直し、自閉症児へのセッションなど実践的なアプローチを行っている。
演奏家の枠を超え、箏を「心と身体を整えるエネルギー療法のツール」として再定義するその活動は、伝統文化の新たな可能性を広げている。
ジャズピアニストとのユニットYAMATO LOUNGE、絵本読み聞かせコラボ、マルチメディアユニットCOMNAL、ポッドキャスト番組「スナックちゃべ」のパーソナリティ、Otonamiでの寺院体験演奏など、多岐にわたる活動を通じて現代における癒しと再生を提案している。
リンク
琴線Lab HP
大人のための非日常体験Otonami 箏体験
https://otonami.jp/experiences/nakashimarin-2ryomon

