値上げできない店が消えていく――個人飲食店が生き残る条件を深読み!


飲食店の倒産件数が過去最多を記録

今年上半期、飲食店の倒産件数が過去最多を更新した。

東京商工リサーチによると、倒産件数は509件
業種別では居酒屋が118件と前年同期比約30%増加し、資本金別では個人経営の飲食店の倒産が182件と目立つ結果となった。

背景には、米や野菜、酒類などの食材価格に加え、人件費や光熱費、家賃の上昇がある。
こうしたコスト増を価格へ転嫁できず、経営が立ち行かなくなる店が後を絶たない。

「値上げしたら客が離れる」

そんな不安が、多くの個人店の経営を苦しめている。

この「値上げへの恐怖」は、経営だけの問題ではない。
実は人間の心理も深く関係している。

値上げを気にしているのは店主だけ?

記事内で、価格設定について興味深い指摘があった。

店主は100円、200円の値上げにも神経をすり減らす。
しかし、客は細かな価格をそれほど覚えていないというのだ。

大幅な値上げは話が別だ。
しかし数十円から数百円程度であれば、会計の総額は覚えていても、一品ごとの価格まで記憶している人は多くない。
ちなみに私も覚えてないw

この背景には、心理学でいう「損失回避」が影響している。
人は「利益を得る喜び」よりも、「失う痛み」を大きく感じる傾向がある。
そのため店主は、「値上げによって客を失うかもしれない」という不安を実際以上に強く感じてしまう。

にもかかわらず、「申し訳ありません」と張り紙を出すことで、かえって客に値上げを意識させてしまうケースもあるという。

店主が感じる心理的なハードルは、消費者が感じるハードルよりも大きい。
値上げへの恐怖が、経営判断そのものを難しくしているのだ。

京都でも個人店が静かに姿を消している

残念なことに京都でも、長く愛されてきた個人店が少しずつ暖簾を下ろしている。

背景にあるのは、食材価格の高騰や家賃の上昇、人手不足、そして後継者不在だ。

どれも一店舗の努力だけでは解決できない問題ばかりである。
一方で、同じような環境でも、連日満席の店があるのも事実だ。

この違いは何だろうか?

生き残る店は「価格」ではなく「価値」で選ばれている

繁盛している個人店を見ていると、共通点がある。

人は料理だけを食べに店へ行くのではない。
それは、価格以外の価値をお客に提供していることだ。

  • そこでしか味わえない料理がある。
  • 店主との会話が楽しい。
  • 料理に合わせた酒を提案してくれる。
  • 店の空気そのものに居心地の良さがある。

そう、客はその店で過ごす時間や、その店ならではの体験に価値を感じ、お金を払っているのだ。

チェーン店が効率や価格で勝負するなら、個人店は体験で勝負する。
価格競争に巻き込まれるのではなく、「また来たい」と思わせる理由をつくれる店が、これからも選ばれていく。

「安い店」より「なくなってほしくない店」

行きつけの店が値上げをすると、「また値上がりした」と感じることも正直ある。
それでも、「この店だけはなくなってほしくない」と思う一軒がある。

人は高いものを嫌うのではない。
価値を感じられないものに、お金を払いたくないだけなのだ。

個人飲食店が生き残るために必要なのは、安さを競うことではない。
選ばれる理由をつくることである。

そして私たち消費者もまた、価格だけで店を選ぶのではなく、
「なくなってほしくない店」を応援するという選択ができる。

それは、一軒の店を守るだけではない。
その街の食文化や、人と人とのつながりを未来へ残すことにもつながるのである。