連載① 変わる「お墓」のかたちを深読み!一人っ子の私にも、「墓じまい」は他人事ではない

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墓じまいをする人が右肩上がりに増えている

墓じまいをする人が増えている。

一人っ子の私にとっても、墓じまいは決して他人事ではない。
還暦の今は、まだ自分で墓参りができる。だが、この先も同じように通い、管理し続けられるとは限らない。
かといって、その負担を子どもに負わせたくない。

周囲を見ても、同じような悩みを抱える人は多い。すでに納骨堂を選んだ同世代の知人もいる。
従来の墓を維持するのか、墓じまいをして、自分が通いやすい別の墓へ移すのか。
それとも納骨堂にするのか。選択肢が増えた分、何を基準に決めればよいのか分からない。

そこで、東京都港区南麻布にある納骨堂「瑞華院 『了聞』」を訪ねた。
なぜ今、墓じまいが増え、納骨堂を選ぶ人がいるのか。瑞華院住職の福井威人氏に話をうかがった。

墓じまいは10年前の約2倍

実際、墓じまいを選ぶ人は、右肩上がりになっている。

厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、墓や納骨堂から遺骨を移す「改葬」の件数は、
2024年度に17万6105件となり、過去最多を更新。
2014年度は8万3574件だったため、この10年間で2倍を超えたことになる。

「東京には地方から出てきた方や、両親が地方出身という方が多くいます。
故郷のお墓を祖父母や両親までは守ってきたけれど、自分の代では面倒を見きれない。
まして、自分の子どもたちには難しいだろうと考え、代々受け継がれてきたお墓をどうするかという問題に直面します」(福井住職)

墓じまいをした後の遺骨の行き先も、多様になった。
別の墓へ移すだけでなく、納骨堂や樹木葬、海洋散骨を選ぶ人もいる。
さらに一部では、遺骨を宇宙へ運ぶ「宇宙葬」や、月面へ届ける「月面葬」といったサービスまで登場している。

もっとも、墓じまいをする人が皆、従来の墓を否定しているわけではない。
福井住職によれば、新たに墓地を求める人も多く、都立青山霊園は高額でありながら、区画によっては抽選となる。
墓じまいを先に済ませ、希望する墓地が見つかるまで、一時的に納骨堂へ遺骨を預ける人もいるという。

墓じまいが増えた背景にあるのは、供養する気持ちが薄れたことではない。
今の暮らしや家族の形に合わせて、無理なく守り続けられる場所を探す人が増えているのだ。

樹木葬も納骨堂も「形を変えたお墓」

さまざまな選択肢がある中、昨今は特に樹木葬の人気が高まっている。

鎌倉新書が実施した2024年の「お墓の消費者全国実態調査」によると、
新たにお墓を購入した人のうち、樹木葬を選んだ人は48.7%。
一般墓や納骨堂を上回り、最も多かった。

「樹木葬」と聞くと、墓石を建てず、山や森にある樹木の根元へ遺骨を埋葬する姿を思い浮かべる人も多いだろう。
私も、そのようなものだと思っていた。
ただし、実際の樹木葬には、さまざまな形がある。

「現在、多くのお寺で販売されている樹木葬は、“コンパクトにしたお墓”ともいえます。
納骨堂も同じく、形を変えたお墓なのです」(福井住職)


確かに、屋外に墓石を建てるか、建物の中に遺骨を納めるかという違いはある。
だが、故人の遺骨を納め、残された人が手を合わせる場所であることに変わりはない。
樹木葬や納骨堂は、従来の墓に代わるまったく別のものではない。
時代や暮らしに合わせて生まれた、新しい墓の形と考えると分かりやすい。

納骨堂は「マンション」に似ている

では、なぜ納骨堂を選ぶ人がいるのだろうか?

福井住職は、一般墓と納骨堂の違いを、一戸建てとマンションにたとえる。

「一戸建てに住めば、土地や庭を自分で管理し、草むしりもしなければなりません。
ご近所付き合いもあります。一方、マンションには管理する人がいて、共用部分も整えてもらえる。
納骨堂を選ぶ方の感覚は、それに近いのではないでしょうか」(福井住職)

屋外にある墓は、墓石の手入れや清掃が必要になる。
遠方にあれば、足を運ぶだけでも負担は大きい。
特に高齢になると、夏の暑さの中で墓参りをすることも容易ではない。
実際に私もお盆に墓参りをする際、あまりの暑さで軽い熱中症になったことがある。
高齢になったら、重症化しかねない。

だが、納骨堂では、建物や参拝スペースを運営者が管理する。
天候に左右されずに参拝でき、交通の便が良い施設も多い。
自分が高齢になった後だけでなく、墓を引き継ぐ子どもの負担も抑えられる。

さらに、従来の墓を寺院に設ける場合は、檀家としての付き合いが生じることもある。
過去の経験から寺との付き合いや、その都度必要となるお布施に不安を感じる人もいるという。
納骨堂には、そうした人でも比較的入りやすい「間口の広さ」がある。

管理の負担を減らしながら、手を合わせる場所は残したい。
納骨堂は、そんな希望に応える墓の形なのである。

50代から考え始める「自分の墓」

『了聞』を訪れるのは、50代以上が圧倒的に多いという。
親の墓をどうするかという問題に加え、自分自身の墓についても現実的に考え始める年代だからだろう。

一方、数は少ないものの、30代で相談に訪れる人もいる。
結婚しない生き方を選ぶ人や、将来、墓を継ぐ人がいないと考える人からの相談もあり、
そうした人は永代供養墓を選ぶケースが多いという。

「納骨堂を選ぶ理由として大きいのは、継承者の問題と経済的な問題だと思います」(福井住職)

『了聞』では、永代供養墓を30万円から用意している。
このプランでは年間の管理費もかからない。
個室の参拝室は別の価格帯になるが、一般墓を新たに求め、墓石を建てる場合と比べれば、費用をかなり抑えやすい。

また、生前に自分の納骨先を契約することもできる。
元気なうちに墓を決めておけば、万が一のときに家族が納骨先を探す必要がなくなり、自分が望む形も残せる。
ただし、納骨先を決めただけで、死後の準備がすべて整うわけではない。

亡くなったことを誰が寺へ知らせ、葬儀や納骨を行うのか。
住まいや財産は誰が整理するのか。
特に一人で暮らす人には、さらに考えておくべき問題が残る。

納骨先を決めた、その先に

墓じまいと納骨堂について話を聞くために訪れた『了聞』だったが、取材は遺骨の行き先だけでは終わらなかった。

福井住職は、身寄りのない人や、家族に負担をかけたくない人に向けて、こう語る。

「一人だからといって、心配しないでください。安心できる方法はあります。
まずは相談して、自分が亡くなった後の道筋をつくっておくことが大切です」(福井住職)

その方法の一つが、葬儀や納骨、住まいの整理などを生前に託す「死後事務委任契約」である。
これは恥ずかしながら、私も知らなかった。
自分が亡くなった後のことを、どこまで自分で決められるのか。
次回、詳しく紹介する。

【DATA】
■正式名称
瑞華院 了聞
運営寺院:浄土宗 瑞華院

■所在地
〒106-0047東京都港区南麻布5-1-4

■アクセス
東京メトロ日比谷線「広尾駅」4番出口から徒歩3分

■開館時間
8時20分~18時(年中無休)
参拝可能時間は9時~18時(最終受付17時45分)

■問い合わせ
0120-1492-08(受付時間9時~18時)

■公式HP
https://ryomon.jp/

■10月20日「十夜会・奉納公演」
2026年10月20日(火)、『了聞』7階本堂で開催。
15時から十夜会法要、16時から箏アーティスト・中しまりん氏とジャズピアニスト・後藤魂氏によるユニット
「YAMATO LOUNGE」の奉納公演が行われる。受付は14時30分から。参加無料、要予約。

詳細・申し込み
https://ryomon.jp/news/10月20日(火)十夜会開催のお知らせ/